法務省の発表資料によると、日本国内で確認されている無戸籍者の数は、法改正の議論が本格化した時期を通じて依然として高止まりが続いていました。支援団体や当事者の手記には、制度と現実の狭間で孤立する切実な声が記録されています。
ある当事者女性は、かつて支援窓口で次のように語っています。
「前夫の度重なる暴力から逃れるため、住民票を移さず身を隠して生活していました。その後に授かった新しいパートナーとの子どもについて、出生届を出せば自動的に前夫の戸籍に入り、居場所が通知されてしまう。子どもを危険に晒すくらいなら、無戸籍のまま育てるしかないと追い詰められていました」
無戸籍となった子どもは、住民票が作成されないことで健康保険証の発行が遅れたり、児童手当の受給やパスポートの取得、銀行口座の開設などで著しい不利益を強いられてきました。法務局や弁護士会による救済措置はあるものの、当事者が役所への相談自体を恐れて潜在化する構造が長年続いていたのです。
法改正によって再婚後の出生届や母・子からの嫡出否認が可能になったことは大きな前進ですが、「前夫への恐怖から再婚自体に踏み切れない女性」や「離婚調停が長期化して婚姻中に別の男性との子を出産した女性」など、依然として救済の網から漏れかねない個別事例に対する現場のきめ細かな法的支援が求められています。