酸素不足によって角膜の防御バリアが崩壊した瞬間、常在菌や外部から侵入した病原体にとって角膜は無防備な培養基と化します。その結果として引き起こされるのが、極めて重篤な角膜感染症です。
代表的な疾患が、角膜の上皮だけでなく実質組織まで欠損が進む角膜潰瘍です。緑膿菌などの毒性の強い細菌が侵入した場合、わずか24〜48時間で組織が融解し、角膜に穴が開く「角膜穿孔」に至ることも珍しくありません。
さらに臨床現場で最も警戒されるのが、土壌や水道水中に生息する原生動物が引き起こすアカントアメーバ角膜炎です。保存液の使い回しや水道水でのレンズ洗浄、あるいは不衛生な手で扱ったレンズをつけたまま就寝することで感染の引き金を引きます。
かつて専門誌の手記や臨床報告で取り上げられた患者の告白では、「目の中にガラスの破片を詰められて擦られているような、夜も眠れない激痛」「光を見るだけで涙が止まらず、目を開けることすら不可能」と描写されるほど過酷な症状を呈します。抗真菌薬や角膜掻爬(病変部を削り取る処置)を数か月にわたり続けても完治が難しく、最終的に角膜移植を余儀なくされるケースも後を絶ちません。目の充血と激痛を自覚した段階では、すでに病変が深部に達している危険性が極めて高いのです。