ドラッグストアの店頭で「急な下痢をなんとかしたい」と思った際、多くの読者が迷うのが正露丸とストッパ下痢止めEXの使い分けです。ネット上では「どちらも似たような下痢止め」と乱暴に括られることも珍しくありませんが、薬理学的なアプローチは根本から異なります。
ストッパ下痢止めEXに配合されている「ロートエキス」は、腸管を動かすアセチルコリンという神経伝達物質を阻害し、暴走している腸の蠕動運動を力づくでストップさせる薬効を持ちます。加えて、水なしで舌の上ですばやく溶ける技術を採用しているため、「次の駅までトイレがない」「商談中の1時間を何としても凌ぎたい」という緊急脱出用として設計されています。
一方で、100年以上の歴史を持つ正露丸(主成分:日局木(もく)クレオソート)は、腸の運動を無理に麻痺させません。腸粘膜からの過剰な水分分泌を抑えつつ、腸管が本来持っている水分吸収能力を正常に戻すことで便を固めるメカニズムを持っています。
ここに見逃せない重大な境界線が存在します。万が一、生牡蠣や腐敗した食事による「感染性胃腸炎」であった場合、ロートエキスのような強力な蠕動抑制薬で腸の動きを完全に止めてしまうと、体外へ排出すべき毒素や病原菌が腸内に長時間滞留し、病状の悪化や全身中毒症状を招くリスクが指摘されているのです。
したがって、「通勤・通学・試験中のストレス性下痢を即座に止めたい」ときはストッパ、「食べ過ぎ・飲み過ぎ・寝冷え、あるいは怪しい食べ物を口にした心当たりがある」ときは正露丸や整腸薬を選ぶというのが、消化器分野の鉄則です。