雹害を受けた愛車を直す際、選択する修理工法によって数十万円単位の金銭的格差と、将来の売却価値の命運が分かれます。現場で採用される技術は主に「デントリペア(Paintless Dent Repair=PDR)」と「従来の板金塗装」の2つに大別されます。
デントリペアは、特殊な金属ロッドをパネルの内側に滑り込ませ、職人の精密な手作業によってミリ単位で凹みを裏側から押し戻す技術です。最大の強みは、新車時の純正塗装をそのまま保持できる点にあります。パテ埋めも再塗装も行わず、ボディを切断することもないため、修復歴がつくリスクを完全にゼロに抑えながら査定価値を維持できます。一方で、雹害車は1台あたり数十個から数百個の凹みができるため、施工には高度な専門技能が求められます。
一方の板金塗装は、凹みを引き出した後にパテで成形し、下地処理を経て広範囲に再塗装を施す手法です。パネルの変形が限界を超えている場合や、塗装面に割れが生じている場合の最終手段ですが、工期が数週間に及ぶうえ、ルーフを切断交換した場合は前述のとおり事故車扱いとなってしまいます。
板金修理の見積もりが愛車の時価額を上回ってしまった場合、保険会社から「経済的全損」と宣告されます。これは「物理的に直せない」のではなく、「直す費用が車の市場価値を超えている」状態です。この局面では、無理に大金を投じて修復歴車にするよりも、全損保険金を満額受給した上で車両を引き渡し、新たな中古車や新車へ買い換えるオーナーが多数派を占めています。