かつて理科室の隅で不気味な存在感を放ち、子どもたちの「学校の怪談」の主役を張っていた人体模型。2026年現在、多くの学校でその姿を見ることは難しくなった。代わりに導入されたのは、立体的な3Dモデルを自由に回転・分解できるAR(拡張現実)ゴーグルや高精細ディスプレイだ。臓器の働きを生体データに基づいたアニメーションで学べる時代になり、ほこりをかぶったプラスチック製の模型は物理的な保管場所の圧迫も手伝って、廃棄や郷土資料館への寄贈が進んでいる。
同じく影をひそめたのが、黒板で使われていた巨大な木製の三角定規や分度器だ。かつては教員が抱えるようにして黒板に押し当て、黄色いチョークで図形を描いていた。現在ではデジタル黒板の画面上で指先一つ動かすだけで、完璧な正三角形や正確な角度の扇形が瞬時に描画される。「重い木製定規を教室から教室へ運ぶ徒労」は、教員の働き方改革の一環としても過去のものとなったのだ。