この店の真骨頂は、食べ進める途中で訪れる「第二の展開」にある。カウンターに置かれた小さなボトル。一見すると普通の香味油に見えるが、実は紅茶のアールグレイを漬け込んだ特製の柑橘香油だ。これを数滴垂らすと、スープの表情がガラリと変わり、ベルガモットの華やかな香味が鴨の脂と溶け合って極上のフレンチスープのような気品を放ち始める。
さらに、特製の「赤おろし」(大根おろしに唐辛子や薬味を合わせたもの)を溶かせば、一転してピリッとした引き締まった辛味が全体を包み込む。一杯の丼の中で繰り広げられるグラデーション豊かな味の変化こそ、リピーターが後を絶たない最大の理由だ。