テレビ局から締め出された水野美紀が選んだ道は、決して芸能界の引退や泣き寝入りではありませんでした。彼女は自身が本当にやりたかった表現を追求するため、活動の場を「舞台」へとシフトします。
その象徴が、2007年に作家・脚本家の楠野一郎とともに旗揚げした演劇ユニット「プロペラ犬」です。プロペラ犬において、彼女は単なる主演女優にとどまらず、企画、キャスティング、脚本打ち合わせ、広報に至るまで自ら泥臭く関わりました。大手事務所時代にはスタッフが全て整えてくれていた環境から一転、客席数数百人の濃密な小劇場で観客の生の呼吸を感じながら芝居を構築する日々。この約10年にわたる舞台での試行錯誤が、現在の彼女を支える「狂気から喜劇まで瞬時に演じ分ける圧倒的な演技持久力」を培ったのです。
さらに見逃せないのが、彼女が若手時代からストイックに培ってきた本格的なアクション経歴です。中学時代から少林寺拳法を学び、後にアクション監督の谷垣健治らのもとで本格的な立ち回りやワイヤーアクションを叩き込まれた彼女は、倉田保昭のアクションクラブに通い詰めたほどの筋金入り。CGやスタントダブルに頼らない本物のアクションスキルは、海外映画『真・女立喰師列伝』や舞台公演でも遺憾なく発揮され、演出家や映画監督たちから「芝居ができて身体も動く稀有な表現者」として高い評価を維持し続ける決定打となりました。