検索窓に「村上開新堂 クッキー」と打ち込むと、サジェストに現れる「まずい」という不穏なワード。1年以上待ち、高額な対価を支払って手に入れたクッキーが本当にまずいのか、ネット上の真偽を検証します。
結論から言えば、この低評価の正体は「現代のクッキーに対する先入観と、村上開新堂の歴史的レシピとの決定的な乖離」にあります。SNSやグルメサイトの低評価レビューを精査すると、不満の声の大半は以下の点に集中しています。
- 「フランス菓子のような芳醇な発酵バターの香りがしない」
- 「食感が驚くほど固く、口の中でホロホロと崩れない」
- 「シナモンやクローブ、生姜の風味が強くて薬膳菓子のように感じる」
現代のパティスリーが提供するクッキーは、上質なバターをふんだんに使用し、空気を含ませてサクサク・ホロホロとした食感に仕上げるのが主流です。対して、村上開新堂のレシピは150年前の明治初期、バターが極めて貴重だった時代に考案された古典的な英国・欧州の手法を忠実に継承しています。
卵白、小麦粉、砂糖、そして防腐と風味付けを兼ねたスパイス類(ナツメグ、シナモン、生姜、カレー粉、コーヒーなど)を使い、極めて密度の高い生地をじっくりと焼き締めます。そのため、一口目は「固い」「甘さが控えめで地味」と感じられがちです。
しかし、愛好家や食通が口を揃えるのは「噛みしめるほどに広がる、小麦本来の力強い旨味と滋味深さ」です。一枚、また一枚と食べ進めるうちに、27種類それぞれ異なるスパイスの調和と奥深さに気づかされます。脂っこさがないため何枚食べても胃もたれせず、濃い目の紅茶や日本茶はもちろん、ウイスキーや重めの赤ワインのペアリングとしても抜群の威力を発揮します。「まずい」のではなく、「時代に迎合しない本物の古典菓子」だからこそ、食べる側の味覚のリテラシーが試されるのです。