初動捜査を担ったのは、数々の難事件を手がけてきた愛知県警察捜査第一課の精鋭部隊だった。指紋の採取、周辺防犯カメラの徹底的なコマ送り解析、宿泊者名簿の照合と関係先への聞き込み。刑事たちは中村区一帯をくまなく歩き回り、手がかりを追った。だが、捜査は早い段階で異例の膠着状態に陥ることになる。
「証拠がないのではない。証拠が不自然なほど整いすぎている」。当時現場に臨場した元捜査関係者は、そう述懐する。乱れのない寝具、拭い去られたかのような第三者の痕跡、出入りを悟らせない手際。まるで誰かが完璧にシナリオを描いたかのような状況が、百戦錬磨の捜査員たちの前進を阻み続けた。