元々野球用として誕生したキャップのつばは、光を遮り視界を確保するために手で曲げて使うのが本来の実用的なスタイルでした。それにもかかわらず、なぜあえてつばを曲げない理由が存在するのでしょうか。
その背景には、1980年代から1990年代にかけてアメリカのストリートで花開いたヒップホップカルチャーの価値観が深く関係しています。当時、貧困層の多いゲットー(過密居住地域)に暮らすブラックユースにとって、高価な正規品のキャップを手に入れることは大きなステータスでした。
彼らは「自分が万引きや粗悪な偽物ではなく、本物の新品をショップで買った」という事実を誇示するために、シールを剥がさない理由やつばをあえてまっさらなフラットのまま保つスタイルを生み出しました。出荷時のまっさらな状態をキープすること自体が、富や成功、そしてストリートでのプライドの象徴だったのです。これがアンダーグラウンドから世界的なファッションの潮流へと昇華し、現在もカルチャーへのリスペクトとして受け継がれています。