ネット上や散策者の間で長年ささやかれてきた「八坂の塔は実は中に入れる」という噂は完全なる事実です。国宝や重要文化財に指定されている日本の伝統的な木造五重塔は、その大半が心柱を中心とした耐震構造を保護するため、初層の扉の外側からの開扉公開にとどまるか、あるいは完全非公開とされています。対して八坂の塔では、木組みがむき出しになった塔の初層内部へ足を踏み入れるだけでなく、急勾配の階段を昇って2層目から周囲の景色を垣間見るという極めて貴重な体験が許可されています。
八坂の塔が中に入れる理由として、五重塔が単なる記念碑ではなく、「五智如来像」を安置し仏舎利を胎内に納めた信仰と教学の実践空間であった歴史的構造が挙げられます。現在公開されている内部には、礎石の上にそびえ立つ雄大な杉の芯柱(心柱)が鎮座し、足利第6代将軍・足利義教によって奉納された本尊五智如来坐像が四方を守護しています。柱や小壁に目を凝らせば、室町時代の絵師・土佐光信の手によるかすかな密教絵画(板壁画)の痕跡が残されており、まるで室町時代の祈りの空間にタイムスリップしたかのような錯覚さえ覚えます。
ただし、観光客なら誰もが無条件に入場できるわけではありません。法観寺の拝観管理は常設の大規模観光寺院とは根本的に異なり、文化財の経年劣化防止と参拝者の生命身体の安全確保を最優先とする厳正な規律のもとで運営されています。寺院関係者の証言や現地掲示板の案内によると、「小学生未満(中学生未満)のお子様は同伴であっても入場不可」「雨天や路面凍結時、強風時は予告なく即座に閉門」「法要や保存点検が行われる日は完全休止」となっており、“開いていれば幸運”と呼ばれるほど拝観機会は限定的です。