有馬温泉の奥座敷、太閤秀吉が「いくら見ても飽きない」と称えた瑞宝寺公園に隣接する瑞宝園は、かつて公立学校共済組合の宿泊施設として誕生した歴史を持ちます。一般の観光客はもちろん、教職員やシニア層の保養所として確固たる基盤を築き、後に民間事業者への運営移管や事業譲渡を経て、幅広い層に親しまれる観光ホテルとして稼働していました。
しかし、建物の竣工から数十年が経過したことで、給排水管や空調設備の老朽化、耐震基準への適合改修といった維持保全コストが年々増大していきました。有馬温泉のような山間部の温泉地では、湿気や温泉成分による資材の劣化スピードが早く、抜本的な大規模修繕には数億円規模の投資を要します。
加えて、旅行市場全体の変容も大きな影響を与えました。昭和から平成にかけて主流だった「団体・保養所型の大規模利用」から「高単価な個人向けラグジュアリー観光」へと需要がシフトする中、維持管理費用の高騰と収益構造のバランスが崩れ、将来的な大規模改修の投資回収が困難と判断されたことが、営業終了に至った決定的な要因です。