この名言が飛び出すのは、荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険 Part1 ファントムブラッド』の序盤です。コミックス派であればジャンプ・コミックス版単行本第3巻(「怪人ディオ・その大犯罪 その①」の巻)、文庫版であれば第2巻に収録されています。エピソードの話数としては第18話にあたります。
物語の舞台は、ジョースター邸でのディオ・ブランドーとの死闘直後。吸血鬼と化したディオとの壮絶な戦いで全身に重度の火傷と骨折を負った主人公ジョナサン・ジョースターは、意識不明の重体となって病院の一室に収容されていました。ロンドンの貧民街・食肉処理場街(オウガーストリート)のボスだったロバート・E・O・スピードワゴンは、ジョナサンの高潔な人間性に魂を打たれ、命の恩人でもある彼を看病するために病室へと駆けつけます。
しかし、そこでスピードワゴンが目にしたのは、ジョナサンに寄り添い、献身的に看病を続ける女性エリナ・ペンドルトンの姿でした。少年時代にディオの策略によって引き裂かれて以来、長い年月を経て奇跡的に再会を果たした2人。意識を取り戻したジョナサンと涙を流すエリナの間には、他人が立ち入れない純粋で神聖な絆が流れていました。
病室の扉を開けかけたスピードワゴンは、二人の間に言葉を交わす以上の深い想いがあることを瞬時に察知します。自分が入り込む隙間など微塵もないことを悟った彼は、静かに病室のドアを閉め、自分自身に言い聞かせるようにこう呟いて背を向けました。
「野暮なツラして入って行けねーぜ……ヘヘッ。スピードワゴンはクールに去るぜ」
荒くれ者の街で育ち、人間の裏表を嫌というほど見てきたスピードワゴンだからこそできる、純度の高い敬意と配慮の表現。このスピードワゴンの病院シーンこそが、今なお語り継がれる屈指の名シチュエーションの正体です。