新年の挨拶において、毎年必ずと言っていいほど話題にのぼるのが「年賀状で去年を使ってはいけない」という作法です。これには単なる「カジュアルすぎるから」という理由を超えた、日本古来の言語文化と去年は忌み言葉とされる理由が深く関係しています。
「去年」の「去」という漢字の成り立ちを紐解くと、「立ち去る」「離れる」「失う」、さらには「死ぬ(他界する)」という意味を含有しています。新年を祝い、相手の長寿や繁栄、関係の永続を祈念する祝賀の書状において、別れや死を想起させる文字を用いることは、伝統的な「言霊(ことだま)」の思想において最大の禁忌(タブー)とされてきました。これが、年賀状で去年がNGな理由の真相です。
現代の認知心理学においても、文字が脳に与えるプライミング効果(先行刺激が後の判断に影響を与える現象)が実証されています。祝意を伝える文面の中に「去」というネガティブな連想を呼ぶ文字が視覚的に飛び込んでくることは、受け手に無意識の違和感や不快感を生じさせます。新年の挨拶状や寒中見舞い、あるいは結婚祝いなどの慶事メッセージでは、必ず「昨年」あるいは「旧年中(きゅうちゅうねん)」と言い換えるのが鉄則です。