実生活において最もトラブルが発生しやすいのが、アルコール摂取や泥酔状態を巡るシチュエーションです。法改正の第3号・第4号に明記された通り、大量の飲酒によって判断能力や意思疎通能力が著しく低下している相手に対する性行為は、相手がその場では明確に抵抗しなかったとしても、不同意性交罪が成立します。
司法の現場では、「自ら進んで酒を飲んだかどうか」ではなく、「行為の時点で性交に同意する正常な判断力・意思表明能力を有していたか」が厳格に問われます。「相手も笑って受け入れていた」「嫌とは言わなかった」という主観的な弁明は、防犯カメラ映像や周囲の証言で泥酔状態(ふらつき、ろれつが回らない等)が裏付けられた場合、一切通用しません。
こうした法改正を受けて話題となったのが「性的同意アプリ」や書面による事前確認です。しかし、刑事法専門の弁護士や裁判実務の現場からは、その有効性と限界について冷静な指摘がなされています。
性的同意アプリでボタンを押した記録や署名が存在していても、その後に酒量が激増して心神喪失に陥った場合や、途中で「やっぱりやめたい」と意思変更した場合には、事前の同意記録は免責理由になりません。性行為における同意は「行為の瞬間まで継続して有効であること」が必要不可欠であり、アプリの記録はあくまで間接証拠の一つに過ぎないという点が実務上の定説となっています。