全ての始まりは、2018年4月1日のエイプリルフールでした。イラストレーターのLommy氏が自身のSNSアカウントに投稿したのは、「お魚いっぱい釣れたよ!(※実際には葉っぱが引っかかっているだけ)」と誇らしげに胸を張る小さなカワウソのイラストでした。騙して誰かを傷つけるための嘘ではなく、自分も周囲も思わずクスリと笑ってしまう無邪気な嘘。この投稿は瞬く間に数万規模のリツイートを記録し、濁流のようなSNSのタイムラインに清涼なオアシスを生み出しました。
Lommy氏は過去のメディア取材や単行本のあとがきにおいて、カワウソがつく嘘について「誰も悲しまず、誰も嫌な思いをしないこと」を絶対のルールとして描き続けていると明かしています。水たまりに飛び込んで「泳ぎの練習をしていたの!」と言い張ったり、食べこぼしを「ほっぺにオヤツをキープしているの!」と主張したりする姿は、幼少期に誰もが持っていた純粋無垢なプライドそのものです。
そして、この世界観を完璧なものにしているのが、一番の理解者であり保護者的存在でもある「カモちゃん」の存在です。マガモをモチーフにしたカモちゃんは、カワウソのあからさまな嘘を決して冷酷に論破しません。「そうなんだ、すごいね」と温かく受け止めつつ、時には絶妙な間合いで優しいツッコミを入れ、そっと好物のプリンを差し出す。この2匹の間に流れる絶対的な信頼関係こそが、読者に「ありのままの自分を受け入れてもらえる安心感」を与えているのです。