50メートル走全体のタイムのうち、スタートから最初の10〜15メートルまでの「一次加速ゾーン」が占める割合は極めて大きいです。最高速度に達するまでの助走区間が極めて短いこの種目では、静止状態からいかに爆発的な前方ベクトルを生み出すかが勝敗を分けます。
学校の体力テストで主流となる「スタンディングスタート(立ちスタート)」の場合、両足の幅と重心の位置が極めて重要です。まず、前後に開く足の幅は「一歩半から二歩分」程度にとどめ、広げすぎないように構えます。前足のつま先は進行方向に真っ直ぐ向け、体重の約7割を前足の母指球に乗せます。この際、後ろ足の踵を軽く浮かせ、頭から背中、後ろ足の踵までが一直線になる前傾角度を作ることが必須条件です。
スタートの合図が鳴った瞬間に最も意識すべきは、「足を前に踏み出す」ことではなく「前足の股関節を素早く畳み、身体を前に倒し込む」動作です。自ら前方に倒れ込む重力を利用しながら、前足のかかとを強く引くようにして地面を後ろ方向へ斜めに押し出します。一歩目の接地位置を無理に遠くへ置かず、身体の重心真下に近い位置へと素早く落とし込むことで、ブレーキをゼロに抑えた強力な推進力が生まれます。
一方、陸上競技大会や本格的な測定で採用されるクラウチングスタートでは、スターティングブロックから受ける地面反力を最大限に活かす姿勢が求められます。「用意(Set)」のコールで腰を肩よりやや高く持ち上げ、両腕は肩幅よりわずかに広く取って地面に垂直に立てます。合図とともに両手で地面を突き放し、後ろ足でブロックを蹴り出すと同時に前足の膝を前方へ鋭く突き出します。頭部を下げたまま、視線を足元から2〜3メートル前の走路に落とし、最初の数歩は地面に対して45度の前傾角度を維持することが加速を最大化する秘訣です。