鴈龍太郎氏(旧芸名・本名:奥村雄大)の人生を決定づけたのは、弱冠24歳で迎えた銀幕デビュー作、父・勝新太郎氏が監督・主演を務めた1989年公開の映画『座頭市』の現場でした。1988年12月26日、京都府内のセットで行われた殺陣の撮影中、奥村氏が手にした小道具の刀が本物の真剣刀身であり、立ち回りの相手を務めたベテラン殺陣師の首を貫通、搬送先の病院で死亡するという前代未聞の惨劇が発生したのです。
警察の捜査では業務上過失致死の疑いで現場検証が行われ、最終的に奥村氏本人は「真剣であると認識していなかった」として嫌疑不十分で不起訴処分となりました。しかし、映画界における安全管理の欠如、プロとして真剣を抜刀撮影に使用する勝プロダクション特有の過度なリアリズム追求体質が世間から猛烈な批判を浴びることとなりました。
デビュー作が人の命を奪う現場となってしまった精神的衝撃は計り知れず、奥村氏は俳優活動の無期限自粛を余儀なくされます。「親の七光り」と期待された華々しい船出は、一夜にして重い十字架を背負う過酷な試練へと暗転しました。