インターネット上の掲示板やSNSでは、ボール投げのコツとして「とにかく腕を風車のようにぶん回せ」「真上に向けて45度で投げ上げろ」といったアドバイスが散見されます。しかし、これらの指導論には重大なバイオメカニクス的欠陥が含まれており、鵜呑みにすると記録低下はおろか肩や肘の痛みを引き起こす恐れがあります。
代表的な誤解が「投球腕を高く上げろ」という指導です。大人が子どもに対して「耳の横に肘を近づけて高く!」と怒鳴る光景がよく見られますが、肩甲骨の可動域を無視して無理に肘だけを高く吊り上げると、肩関節のインピンジメント(衝突症候群)を誘発し、腕を滑らかにしならせることができなくなります。投げる際の自然な両肩のラインは、正面から見たときに「両肩を結んだ直線の延長線上に肘が位置する」のが解剖学的に最も負担が少なく、最大の遠心力を生み出せるポジションです。
また、「助走スピードを限界まで上げれば飛ぶ」という言説も大きな落とし穴です。小学生の筋力では、全速力で走った勢いを踏み込み足一本で受け止めて制動することができません。走るスピードが速すぎると、足が踏ん張れずに上体が突っ込み、ボールを手から離すタイミングが狂って暴投や低空飛行につながります。助走は全力疾走ではなく、「リズミカルなスキップ程度の速度」で助走に入り、投球直前にグッとブレーキをかけて身体を反転させるメリハリこそが重要です。