ネット上の回顧録や当時のファンの証言を検証すると、天海祐希の歌唱力の評判については「卓越した技術派というよりは、感情表現と芝居心で魅せるタイプだった」という評価が定着しています。圧倒的な発声や技巧を誇るタイプではなかったものの、セリフの延長線上にある自然な歌唱と卓越したリズム感、そして何より観客の感情を揺さぶる表現力に長けていました。
その魅力を完璧に引き立てたのが、月組トップ娘役の麻乃佳世です。麻乃はもともと天海の大ファンであり、天海を慕って宝塚を受験したという有名な経緯を持っています。2人が織りなすコンビネーションは、芝居を超えた深い信頼関係に支えられていました。
代表作となった『ミー・アンド・マイガール』のビルとサリー役、サヨナラ公演となった『国境のない地図』など、2人が見せる呼吸の合った掛け合いは、今なお「宝塚史上最高峰の黄金コンビ」として語り継がれています。天海が退団を決意した際、麻乃も「天海さんと一緒に辞めます」と即答し、トップコンビとして同時に劇団を去ることになりました。