ネット上のQ&AサイトやSNSで散見される「掃除機で一気に吸い取れば手軽で安全」という言説は、極めて危険な都市伝説です。家電メーカーの取扱説明書や製品安全データにおいても、ガラス片の吸引は明確な禁止事項に指定されています。
高速で吸引された硬質ガラス片は、内部の蛇腹ホースや集塵パックを切り裂き、サイクロン機構の樹脂製ファンを激しく傷つけます。さらに深刻なのは、粉砕されたミクロン単位のガラス粉末が標準フィルターをすり抜け、強力なモーター排気風に乗って部屋全体の空気中へ勢いよく噴射される現象です。これにより、肉眼で見えなかったガラス粉が呼吸器系へ吸入されたり、ソファーやカーテンの繊維深くに突き刺さって永続的な接触性皮膚炎の原因となります。
どうしても掃除機を使用せざるを得ない特殊な状況(毛足の長いラグの奥深くに入り込んだ場合など)においては、ノズルの先端に不要になったストッキングや薄手の靴下を二重に被せ、輪ゴムでしっかり固定した状態で吸引する裏ワザを用います。ガラス片はストッキングのメッシュ表面に吸着され、本体内部への侵入を完全にシャットアウトできます。吸着後はゴミ箱の底へノズルを近づけ、掃除機の電源を切ることで安全にゴミ袋内へ落とし込めます。
また、自然界に存在する「びんのかけら」の代表格であるシーグラス(ビーチコーミングで収集されるガラス片)と、家庭内で割れた直後のガラス片を同列に捉える誤解も存在します。海岸に打ち上げられたシーグラスは何年もの歳月をかけて波と砂に揉まれ、角が丸く削ぎ落とされた安全な鉱物状物質へと変質していますが、割れたての瓶のかけらは鋭角な切削面を持ち、極めて高い切創エネルギーを保持しています。「小さな破片だから少し踏んでも痛いだけ」という過小評価は禁物です。