SNSやネット掲示板で事故現場の写真が拡散されるたび、「軽自動車は紙のように潰れる」という言説が飛び交います。しかし、自動車安全工学の現場視点に立つと、この見解には重大な誤解が含まれています。
現代の自動車設計における世界標準は「クラッシャブルゾーン(潰れることで衝突エネルギーを吸収する部位)」と「セーフティケージ(乗員が生存するための強固な客室空間)」の明確な分離です。エンジンルームなどのボディ前後はあえて効率的に潰れるよう設計されており、乗員にかかる衝撃Gを最小限に逃がします。外観が激しく損壊していても、ドアが開閉可能で車内空間が保たれていれば、それは安全設計が完璧に機能した証拠です。
かつての軽自動車は規格上の寸法制限(全長3,400mm以下、全幅1,480mm以下)から十分な衝撃吸収ストロークを確保できず、キャビンが変形しやすい課題を抱えていました。しかし現在では、超高張力鋼板(ハイテン材・ホットスタンプ材)の多用や骨格構造の連続フレーム化により、客室の変形耐性は劇的かつ強固に進化しています。