なぜ人口270万人を超える政令指定都市・大阪市において、子育て世代が渇望する電動自転車の購入支援が頑なに導入されないのでしょうか。市議会の議事録や市政改革の推移、都市交通計画のデータを紐解くと、そこには大阪市で補助金が出ない理由と真相が明確に浮かび上がってきます。
第1の要因は、大阪市中心部の地形と圧倒的な交通インフラの充実度です。上町台地など一部の起伏を除き、大阪市の大部分は極めて平坦な低地で構成されています。くわえてOsaka Metro(地下鉄)が網の目のように走り、市バス網も高密度で整備されているため、行政側には「電動アシストでなければ移動が困難な交通空白地域が極めて少ない」という政策的判断が根底にあります。
第2の要因は、長年大阪市を悩ませてきた「放置自転車問題」です。市関係者の証言資料によると、大阪市は過去数十年にわたり、梅田や難波、天王寺をはじめとするターミナル駅周辺の不法駐輪対策と撤去事業、機械式駐輪場の建設に年間数十億円規模の巨額予算を投じ続けてきました。「これ以上の自転車利用の野放図な促進よりも、駐輪秩序の維持と歩行者の安全確保が優先課題である」という都市管理上の力学が働いているのです。
さらに、都市交通社会学が指摘する「移動の公平性(モビリティ・ジャスティス)」の観点も無視できません。自家用車を保有せず公共交通を利用する単身者や低所得層との税負担の公平性を保つため、特定世帯の高額な私有財産取得に対して直接的な公金補填を行うことへの慎重論が、歴代の大阪市政において支配的であり続けています。