SNSや育児相談コミュニティで頻繁に見受けられるのが、「胸の上に硬いコリコリがあるけれど、痛くないから様子見でいいですよね?」という書き込みです。しかし、助産師や乳腺外科専門医は口を揃えて授乳しこり痛くない放置の危険性に強い警鐘を鳴らしています。
「痛みのないしこり」は、母乳の出口が完全に塞がれて内部に溜まり続けた「乳瘤(にゅうりゅう=ミルクの嚢胞)」である場合が多く見られます。炎症を伴っていないため初期は無痛ですが、放置された母乳はやがて濃縮してチーズ状やゼリー状に固まり、外科的な吸引処置を行わない限り自力排出が極めて困難な状態に陥ります。さらに深刻なのは、ある日突然、皮膚常在菌などが侵入した瞬間に数時間で激痛・高熱を伴う急性化膿性乳腺炎へと豹変するケースです。
都内の母乳外来を訪れた生後3カ月の男児を育てる30代母親の手記には、生々しい現場のリアルが綴られています。
「抱っこ紐を使うようになってから、右胸のデコルテあたりにビー玉のような硬い塊ができていました。押してもまったく痛くないので『そのうち赤ちゃんが飲んでくれるだろう』と2週間放置していたんです。ところがある夜、突然ガタガタと歯の根が合わないほどの悪寒に襲われ、一気に39.2℃まで発熱。胸の上側は真っ赤に腫れ上がり、触れるだけで叫ぶほどの激痛になりました。緊急搬送された病院で『なんでもっと早く来なかったの』と告げられ、針で濃縮した膿を抜く処置を受ける羽目になりました……」
加えて、授乳期であっても乳がんや葉状腫瘍といった器質性疾患の発生確率がゼロになるわけではありません。痛みがないからと自己判断で放置を続けることは、母体にとって極めてハイリスクな選択肢と言わざるを得ません。