賽銭の金額をめぐり、2020年代以降に神社仏閣が直面している最大の危機が「銀行の大量硬貨取扱手数料」です。大手メガバンクやゆうちょ銀行が窓口およびATMでの硬貨預け入れを有料化したことで、小銭が集まる寺社が多大な手数料負担を強いられています。
ある地方神社の宮司は、メディアの取材に対して苦渋の表情で次のように明かしています。「初詣で賽銭箱に集まった1円玉や5円玉を数千枚単位で金融機関に持ち込むと、手数料の総額が入金額を上回る『逆ざや』が発生する年さえあります。氏子崇敬者の善意であることは重々承知していますが、集計して銀行に運ぶ職員の人件費や手数料を考えると、小銭の山を見るのが辛くなるのが本音です」。
金融機関の規定では、一定枚数以上の硬貨を預け入れる際、数百円から数千円の手数料が発生します。1円玉を1,000枚(1,000円分)入金するために、1,100円の手数料を取られれば、結果として100円の赤字が生じる計算です。こうした背景から、現在では多くの寺社関係者が「できれば100円玉や500円玉、あるいは紙幣で納めていただけると維持管理の面で非常に助かる」と吐露しています。
この手数料対策や時代の利便性向上として導入が進んだのが、QRコード決済などを利用した「キャッシュレス賽銭」です。京都や日光などの著名寺社、観光地の神社を中心に導入実験が行われましたが、その評判は大きく二分しています。
肯定派からは「小銭を持ち歩かないのでスムーズ」「防犯面で賽銭泥棒の被害を防げる」「明朗会計で家計管理がしやすい」という声が上がる一方、否定派や古参の参拝者からは「画面をタップするだけでは神仏へのありがたみが感じられない」「賽銭箱に硬貨が当たる『チャリン』という清めの音が響かないのは味気ない」といった強い抵抗感が示されています。加えて、決済事業者へ支払う3%前後の決済手数料が新たな固定費となるジレンマもあり、完全な定着には至っていません。