長年親しまれてきた「1日1万歩」というスローガンは、1960年代の万歩計発売時に生まれた商業的キャッチコピーに端を発している。近年の大規模コホート研究や疫学調査によって、健康増進と死亡率低下に関するリアルな分岐点が明らかになってきた。
国内外の追跡調査データを統合したメタアナリシスによると、全死亡リスクの低減効果は1日の理想的な歩数目安として成人(65歳未満)で約8,000歩、高齢者(65歳以上)で約6,000〜8,000歩に達した時点で概ねプラトー(頭打ち)に達する。8,000歩を超えて1万歩、1万2,000歩と歩行数を増やしても、得られる健康ベネフィットの上昇曲線は極めて緩やかになり、逆に関節やアキレス腱への力学的負荷が増大する。
歩行運動の質を担保する上で欠かせないのが、ウォーキング時の目標心拍数の管理だ。負荷が低すぎれば心肺機能への刺激が足りず、高すぎれば無酸素運動へと移行してしまう。中強度を保つ心拍数の算出には、以下のカルボーネン法または簡易推定式が臨床現場で推奨されている。
【簡易目標心拍数の計算式】
目標心拍数(拍/分)=(220 - 年齢)× 0.50 〜 0.65
例えば40歳の場合、(220-40)×0.50〜0.65=分間90〜117拍が目標レンジとなる。スマートウォッチなどのウェアラブル端末を持たない場合は、「隣の人と途切れずに会話ができるが、歌うことはできない程度の呼吸状態」(いわゆるニコニコペース)を目安にすると狂いがない。