設楽統がなぜここまで強固な鉄筋コンクリート構造や防火設備、そしてセキュリティにこだわり抜いた家を建てたのか。その根底には、2007年3月に発生した「自宅アパート火災全焼事件」という壮絶なトラウマと教訓が存在します。
当時、設楽が家族とともに暮らしていた中野区のアパートの一室から火災が発生。部屋は瞬く間に激しい炎に包まれ、家財道具、思い出の品、パスポート、さらには相方の単独ライブ用ネタ帳に至るまで、文字通り「すべてが灰燼に帰す」という壊滅的な被害に見舞われました。しかもその日は、お笑い特番『ザ・イロモネア』の収録当日。黒焦げになった携帯電話と、タバコの煙と煤の臭いが染み付いた服のままスタジオへ向かい、その極限状態の中で笑いを勝ち取ったエピソードは、今やバラエティ界の伝説として語り継がれています。
しかし、本人の胸裏に残った恐怖と無力感は計り知れないものがありました。自身がレギュラーパーソナリティを務める深夜ラジオ番組『JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD』(TBSラジオ)において、当時の状況を振り返る設楽の声には、笑い話の裏に潜む切実な実感が滲んでいました。「本当に全部燃えてなくなった」「火事の恐ろしさは経験した者しか分からない」と述懐していた設楽にとって、家とは単なる社会的成功を誇示するトロフィーではなく、「何があっても絶対に燃えない、家族の命と未来を守り抜くシェルター」でなければならなかったのです。
下積み時代の1999年に結婚し、風呂なしアパート時代から文句ひとつ言わずに自分を信じ支え続けてくれた妻、そして成長を見守ってきた一人娘。すべてを失った火災の灰の中から這い上がり、約10年の歳月を経て完成させた推定4億円の要塞は、家族に対する最大限の感謝と責任の証といえます。