石破茂の政治家としての原点を語るうえで、日本政界の巨頭であった田中角栄元首相との出会いは外せない。父親である石破二朗・元鳥取県知事の死去に際し、当時銀行員だった若き石破に政界入りを強く勧めたのがほかならぬ田中角栄だった。秘蔵エピソードとして今も語り継がれるのは、田中事務所へ挨拶に訪れた際の強烈な一言である。
「全戸訪問して歩け。戸別訪問こそが選挙の基本だ」――。泥臭い現場主義の教えを直接受け叩き込まれた若き日の体験が、後の泥臭くも強固な選挙地盤を築く骨格となった。メディアのカメラが回っていないところで交わされた密度の濃い指導こそが、孤高の政治家・石破茂を形作る決定的な要素となったのである。