作中では何度か、ピノコが「本来あるべき大人の女性の姿」として描かれる感動的なエピソードが存在します。
代表的なのが、ピノコが恋に落ちる夢を描いた「ピノコ・ラブストーリー」や、実質的な最終回として位置づけられる「人生という名のSL」(週刊少年チャンピオン1978年9月18日号掲載)です。夢の中で走る列車の中、ブラック・ジャックの前に現れたのは、美しく成長した大人のピノコでした。彼女は微笑みながらブラック・ジャックに語りかけ、これまで共に歩んできた日々に感謝を伝えます。
一部のネット上の噂では「ピノコが最後に死亡する」「ブラック・ジャックと結婚する」といった俗説が語られることがありますが、原作の結末においてピノコが死ぬような悲劇的ラストは存在しません。二人はどこまでも続く人生の旅路を、変わらぬ絆で共に歩み続けるという、希望に満ちたオープンエンドで物語は幕を閉じます。大人の姿になれずとも、二人の心は最初から対等なパートナーであったことを、手塚治虫は最後まで描き切りました。