本作がこれまでの作品と一線を画す最大の理由は、日本の伝統文化である茶道と華道を物語の主軸に据えた革新的なプロットにある。一見すると静謐な美を追求する世界だが、その裏には権力闘争と嫉妬、そして血塗られた謀略が渦巻いている。伝統的な時代劇の文脈を完全になぞりつつも、現代的なサスペンスドラマのスピード感を融合させた緻密なシナリオは圧巻の一言だ。
一服の茶を立てる作法や一輪の花をいける所作の一つひとつに、登場人物たちの命がけの暗号と心理戦が込められている。狂気と隣り合わせの美学。刃を交えない殺し合いとも言えるその緊迫した空間構成は、観る者の神経を心地よく研ぎ澄ませていく。これまでの歴史劇の枠組みを根底から破壊する、まったく新しいジャンルの誕生と言っても過言ではない。