東海道本線が運ぶ旅人やビジネス客にとって、富士駅前の飲食店街は一歩足を踏み入れるだけでタイムスリップしたかのような錯覚を覚える魅惑のエリアだ。褪せたベルベットのソファ、少し燻んだ真鍮のドアノブ、そして天井から吊り下げられた琥珀色のシャンデリア。昭和の高度経済成長期からそのまま時が止まったかのようなスナックバーの空間演出は、レトロカルチャーを愛する若者たちにとっても新鮮な体験となっている。
また、富士駅前の店舗群の大きな特徴は、立地の良さとアットホームさの絶妙なバランスにある。駅から目と鼻の先でありながら、扉を開ければ都会の喧騒とは無縁の温かい世界が広がる。ボトルキープされた常連客のラベルを眺めつつ、ママが手際よく作るハイボールを傾ける。そんな贅沢な時間が、ここでは誰もが手に入る日常として用意されている。