初音ミク版が公開された直後、wowaka氏が率いるロックバンド「ヒトリエ」によるセルフカバー版が公開され、音楽シーンに大きな衝撃を与えました。この2つのバージョンを比較することで、作品の持つ立体的な構造が浮き彫りになります。
初音ミク版は、人間離れしたブレスレス(無呼吸)なスピード感と、電子音の硬質さが生み出す「神聖な祈り」のような響きを持ちます。BPM222の猛烈なリズムの上で、ミクの高域ボーカルがデジタルな完璧さをもって世界を疾走します。
一方、ヒトリエによるセルフカバーは、歪んだギターサウンド、うねるベースライン、そしてwowaka氏自身の肉声による「生々しい呼吸」が前面に押し出されています。肉体の限界に挑むようなボーカルワークは、バーチャルな概念だった歌詞を、一人の人間が血を流しながら叫ぶリアルなドラマへと昇華させました。この両輪が存在することによって、『アンノウン・マザーグース』はボーカロイドとロックの歴史を繋ぐ唯一無二の架け橋となったのです。