紫水晶(アメジスト)にまつわる伝承は、常に二面性を帯びている。ギリシャ神話において、酒の神であるディオニューソス(バッカス)の気まぐれな怒りから乙女アメシストを守るため、月の女神アルテミスが彼女の姿を純白の石へと変えた。悔恨の涙とともにバッカスが注いだ赤ワインによって、石は深遠な紫色へと染まったとされる。
この神話が示すのは、激情の沈静化と、それに伴う痛みを伴う浄化のプロセスだ。古くから霊性を高める高貴な石と尊ばれてきた一方で、持ち主の内面に潜む欺瞞や抑制された感情を容赦なく炙り出す性質があるとも信じられてきた。中途半端な覚悟で身につければ、自らの内面と向き合うことを強制され、心理的な重圧として跳ね返ってくる。それが何世紀にもわたり「人を選ぶ石」と呼ばれ続けてきた所以である。