子泣きじじいの故郷である徳島県三好市山城町は、現在「妖怪の里」として世界的な注目を集めています。急峻な山々に囲まれ、吉野川の激流が刻んだ大歩危・小歩危の峡谷が広がるこの地には、児啼爺をはじめとする60種類以上の妖怪伝説が今なお語り継がれています。
山城町の藤川谷沿いには、地元住民の手によって建立された「子泣きじじいの石像」が静かに佇んでいます。現地を訪れると、深い谷底から吹き上げる冷気と、鬱蒼と茂る原生林の圧倒的な自然美に包まれます。2008年には、世界妖怪協会(会長・水木しげる)より「怪遺産」として正式認定を受けました。
現地の観光振興に携わる関係者や地域住民への聞き取りでは、次のような声が寄せられています。
「子どもの頃は、日が暮れてから山道を通ると本当に子泣きじじいが出るぞと脅されたものです。ただ怖がらせるだけでなく、山崩れや転落の危険から子どもを守るための愛情深い教えでした。今では全国からファンや研究者が訪れてくれますが、この深い渓谷の空気に触れれば、昔の人がそこに人智を超えた存在を感じ取った理由が肌で理解できるはずです。」