牛乳は体に悪い?科学的根拠と最新論文が暴く死亡・発がんリスクの真相

牛乳は体に悪い?科学的根拠と最新論文が暴く死亡・発がんリスクの真相

牛乳は体に悪い?科学的根拠と最新論文が暴く死亡・発がんリスクの真相の真相や最新動向に迫る! 専門的な視点でご紹介しています。

ネット上の言説で頻繁に拡散されるのが、「牛乳を世界で一番飲んでいる北欧諸国で大腿骨頸部骨折が最も多い。だから牛乳は骨を弱くする毒だ」という、いわゆるカルシウムパラドックス論法だ。この論説は一見すると説得力があるように思えるが、疫学統計の基本的な落とし穴である「交絡因子(擬似相関)」を意図的に無視している。

北欧諸国で高齢者の骨折率が高い最大の理由は、高緯度地域特有の日照時間の短さに起因する慢性的な「ビタミンD欠乏」である。カルシウムをどれほど食事から摂取しても、腸管での吸収と骨への沈着を促すビタミンDが不足していれば骨密度は維持できない。さらに、北欧の高齢者は大柄で重心が高く、転倒時の衝撃が大きい点や、氷結した路面での転倒事故が多発する地理的環境、骨折診断の登録精度が世界最高水準である点など、複合的な交絡因子が重なっている。

もう一つの定番の誤謬が、「牛乳を飲むと血液が酸性化し、それを中和するために骨からカルシウムが溶け出す(アシドーシス説)」という主張だ。この言説は生理学の基礎を完全に無視している。人間の血液pHは、肺による呼吸調節と腎臓による重炭酸塩の再吸収・酸排泄機能によって、厳密に「7.35〜7.45」という極めて狭い弱アルカリ性の範囲に自動制御されている。酸性食品やアルカリ性食品を口にした程度で血液の酸塩基平衡が崩れ、骨が溶け出すなどという現象は生体内で絶対に起こり得ない。

高橋 健太
著者

高橋 健太

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。