ウエイトトレーニングの現場において、「ノーペインノーゲイン」は長年、筋肉を極限まで追い込む際の精神的支柱として使われてきました。筋肉痛や筋肉が焼けるような感覚(バーンアウト)を乗り越えてこそ筋肥大が起こる、という考え方です。
しかし、近年のスポーツ科学ではこの解釈に明確な線引きがなされています。歓迎すべき痛みとは、ターゲット部位への適切な負荷によって生じる「筋肉疲労」や「遅発性筋肉痛(DOMS)」です。一方で、関節の鋭い痛み、靭帯の違和感、腱炎といった「骨格系の痛み」は、ただのオーバートレーニングやフォーム不良によるケガの前兆に過ぎません。
「痛みを我慢して回数をこなすこと」を正当化するためにこの言葉を使うと、長期離脱を招く致命的な損傷につながります。現代の筋トレにおけるノーペインノーゲインとは、「安全なフォームを維持しながら、最後の1レップを妥協しない克己心」を指すと理解するのが賢明です。