物語の全編を支配する最大の暗雲が、15年前に発生した連続殺人事件の犯人「殺人鬼LL」の存在です。被害者の左耳を削ぎ落とし、数日間にわたる凄惨な拷問を加えて命を奪うという残虐極まりない犯行手口から、警察と世間は容疑者と目された八野衣真(はちのい しん)を稀代の怪物として断罪しました。八野衣が焼身自殺を遂げたことで事件は幕引きとなったかに見えましたが、ここには周到に仕組まれた戦慄の冤罪工作が隠されていました。
八野衣真は殺人鬼LLなどではなく、むしろ真犯人の罠に嵌められた無実の被害者に過ぎませんでした。八野衣の正体は、過酷な生い立ちを抱えながらも愛する息子(後のエイジ/蓮)のために懸命に生きようとしていた、心優しい一人の父親だったのです。彼を殺人鬼へと仕立て上げ、自殺に見せかけて焼殺した殺人鬼LLの正体は、エイジの養父である浦島亀一(うらしま きいち)でした。
浦島亀一は、表向きは身寄りを失った殺人犯の息子を引き取って深い愛情を注ぐ慈愛に満ちた保護者を演じ続けていました。しかしその本質は、他者の精神と肉体を徹底的に蹂躙することに至上の愉悦を覚える、真性のサイコパスでした。亀一がエイジを引き取った真の目的は、八野衣真の血を引く息子を手元に置き、彼が成長して絶望し、精神を崩壊させていく過程を特等席で鑑賞するという狂気じみた欲望を満たすためだったのです。15年の時を経て再び発生したLLの手口に酷似した猟奇殺人事件も、すべては亀一の歪んだシナリオの上に転がっていた惨劇でした。