多くの家庭で無意識に行われている危険な調理法があります。それは「乾燥ひじきをぬるま湯で戻し、その戻し汁を旨味や出汁が出ていると勘違いして、そのまま炊き込みご飯や煮物の煮汁として鍋に注ぎ込む」という手法です。これは最も避けるべき調理上の盲点と言えます。
無機ヒ素は水溶性であり、熱湯に溶け出しやすいという物理的性質を持っています。つまり、戻し汁の中には乾燥ひじきから抜け出た高濃度のヒ素が大量に溶け込んでいるのです。旨味成分ではなく、有害物質の濃縮液を料理に再投入していることになってしまいます。
農林水産省が推奨する最も確実なひじきのヒ素抜き調理法は、「水戻し」と「ゆでこぼし」を組み合わせた工程です。具体的には以下のステップを遵守することで、ひじきの発がん性リスクを懸念される水準から大きく引き下げることが実証されています。
- たっぷりの水で戻す(水戻し):乾燥ひじきの重量の約20〜30倍以上の水に浸し、規定時間(約20〜30分)戻します。この工程だけでヒ素の約3割が水中に溶出します。
- 水洗いでしっかり流す:ザルにあげて戻し汁を完全に捨て、流水で2〜3回しっかりと揉み洗いします。
- 沸騰した湯で茹でる(ゆでこぼし):鍋にたっぷりの湯を沸かし、戻したひじきを投入して約2〜3分間強火で茹で上げます。
- 茹で汁を捨てて再水洗い:茹で汁を完全に切り、冷水でサッとすすぎます。
この水戻しとゆでこぼしの手順を踏むことで、原材料に含まれていた無機ヒ素の約80%〜90%が湯水とともに除去されます。なお、カルシウムや食物繊維は不溶性であるため、この下処理を行ってもほとんど失われません。鉄分や一部の水溶性ビタミンはわずかに流出しますが、ヒ素の除去効率を考えれば極めて理にかなった安全調理法です。