「ピエンロー」というユニークな名前は、中国語の「扁炉(ピエンロー / biǎnlú)」に由来します。もともとは中国の広西壮族自治区をはじめとする南部地域で、寒い季節に家族や仲間と囲んで食べられていた素朴な郷土鍋料理です。
この料理が日本で広く知られる決定打となったのが、舞台美術家・エッセイストとして知られる妹尾河童氏のベストセラー『河童のスケッチブック』でした。妹尾氏が知人の中国留学生から教わった作り方をイラストとともに紹介したところ、文化人や料理愛好家を中心に大反響を呼び、瞬く間に全国へ伝播しました。
鍋料理といえば多種多様な具材と濃厚な鍋つゆで楽しむスタイルが定番ですが、ピエンロー鍋はその真逆を行く潔さが特徴です。素材本来の甘みと出汁の力を極限まで引き出す調理法は、時代を超えて冬の定番メニューとして愛され続けています。