「麦は泣き 麦は咲き 明日へ育っていく」――聴き手の胸を鋭く打つこのフレーズには、生きることの本質が凝縮されている。劇中で玉山鉄二演じる主人公・亀山政春と、シャーロット・ケイト・フォックス演じる妻のエリーが歩んだ道は、幾度となく途絶えかけた険しい道のりだった。
作中で描かれる「麦」は、北海道の過酷な風雪に耐え抜く穀物であると同時に、見知らぬ土地で孤立無援の苦難を乗り越えたエリーそのものの姿でもある。アイリッシュやスコティッシュの伝統的な旋律を彷彿とさせるバグパイプ調の力強い音色が、和の郷愁と重なり合う構造は実に見事だ。どこか懐かしく、けれど圧倒的に力強い生命力が、聴く者の心を昂ぶらせる。