発端は2018年8月、北海道砂川市の住宅街近くに出没した体長約1.4メートルの雌のヒグマでした。砂川市からの緊急出動要請を受け、現場には地元猟友会の砂川支部長を務めていた池上治彦(いけがみ はるひこ)氏を含むハンター2名と、砂川市職員、そして北海道警察の警察官が駆けつけました。
現場ではヒグマが住宅や住民に危害を加える切迫した危険があり、警察官や市職員立ち会いのもと、駆除方針が決定されました。池上氏はヒグマの背後に高さ約8メートルの斜面(土手)が存在し、バックストップ(弾丸を受け止める自然の壁)として機能することを確認した上でライフル銃を1発発射し、見事にヒグマを仕留めて事態を鎮圧しました。
現場では人命被害もなく、迅速な対応として一件落着したかに見えました。しかし事件から数か月後、北海道警察砂川警察署および北海道公安委員会は、池上氏が「建物に向かって銃弾を発射した」とし、鳥獣保護法および銃刀法違反の疑いがあるとして事情聴取を開始。2026年4月、北海道公安委員会は池上氏に対し、銃所持許可取り消し処分を下しました。
北海道警察および公安委員会が主張した銃所持許可取り消し理由の根拠は、「銃弾が命中しなかった場合や跳弾(ちょうだん)が発生した場合、土手を越えて背後の住宅に弾が届く恐れがあり、公共の安全を害した」という形式的な危険性の指摘でした。公的機関の正式な要請に応じ、危険を顧みず任務を遂行した民間人に対し、後から重罰を科すというこの対応は、現場の猟友会関係者に激しい衝撃と不信感をもたらしました。