御座候と今川焼きの根本的な違いを一言で表すなら、「一般名詞」と「特定企業の登録商標」の関係にあります。円筒形の型に生地を流し込み、餡を挟んで焼いた和菓子全般を指す集合名詞が「今川焼き」や「大判焼き」であり、その最高峰ブランドとして確立された製品が「御座候」です。
しかし、愛好家や和菓子職人が「両者は別物」と口を揃える背景には、構造上の決定的な差異が存在します。一般的な今川焼きは、カステラのようにふっくらと厚みのある生地で餡を包み、生地自体の甘みや食べ応えを重視する傾向があります。これに対して御座候の最大の特徴は、「餡を食べるための極薄の皮」という設計思想です。
御座候の断面を見ると、外周の皮はわずか1〜2ミリ程度しかありません。その内部には、ぎっしりと隙間なく小豆が詰まっています。この限界まで薄い皮で大量の餡を美しく密閉する技術は、長年の訓練を積んだ職人の手技によってのみ成立しています。大量生産の機械焼きでは決して真似できないこの構造こそが、「御座候は今川焼きとは一線を画す」と評される最大の理由です。