本作が単なるサスペンスにとどまらず、深い人間賛歌として成立している理由は、家族社会学や心理療法の観点からも極めて正確かつ誠実に人間の苦悩を描いている点にあります。
重大事件が発生した際、社会は往々にして加害者家族を「同罪」として排斥し、被害者遺族には「永遠に悲嘆に暮れる被害者像」を無意識に強要します。劇中の深見家では、娘の死を契機に両親の精神的つながりが断絶し、母娘の共依存的な執着と残された息子の疎外感がリアルに描写されました。一方の遠山家でも、世間の私刑から逃れるために名前を変え、互いの本音を封殺して生きるという「機能不全家族」の悲劇が克明に描かれています。
【プロの結論】本作をおすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
ドラマとしての完成度は極めて高いものの、その圧倒的な重厚さゆえに、鑑賞にあたっては観る側の心理状態も重要になります。
【心から鑑賞をおすすめできる人】
- 『Mother』『カルテット』『怪物』など、坂元裕二脚本の台詞劇や人間ドラマを深く愛している人
- 安易な勧善懲悪ではなく、人間の複雑な内面や罪と許しの本質を描いた本格的な映像作品を求めている人
- 永山瑛太、満島ひかり、風間俊介、大竹しのぶらによる、演技の極限状態を体感したい人
【鑑賞に少し慎重になるべき人】
- 現在、重度の精神的ストレスや近しい人を亡くしたばかりで強い悲嘆の中にある人(劇中のリアルな慟哭描写が精神的負荷になる可能性があります)
- テンポ重視の痛快なミステリーや、爽快なハッピーエンドを求めている人