映画『アウトレイジ』の配役が発表された当時、映画ファンや批評家の間には驚きと半信半疑の空気が漂っていた。加瀬亮といえば、透明感のある繊細な演技で評価を高めてきた実力派。武闘派ヤクザが跋扈する血生臭いバイオレンスアクション作品とは、対極の地点にいる役者だと考えられていたからだ。
だが、その先入観は一瞬で打ち砕かれる。彼が演じた石原波留男は、従来のヤクザ映画に登場する無骨な極道とは一線を画す。金計算と株取引に長け、英語を流暢に操るインテリ幹部。その一方で、格下の組員や金主に対しては容赦ない暴力と怒号を浴びせる。狂気と卑屈さが入り混じった金切り声は、観客を慄然とさせた。「いい人を演じるのに飽きていた」と語る加瀬が、自らの殻を打ち破った瞬間だった。