テレビの画面から離れた桂文枝が現在全精力を注いでいるのが、原点である落語高座活動です。天満天神繁昌亭やなんばグランド花月(NGK)での定席出演はもちろん、東京の国立演芸場や全国各地の文化会館での独演会ツアーを精力的にこなしています。
特筆すべきは、彼が生涯をかけて紡ぎ出してきた300作を超える「創作落語」の存在です。従来の古典落語に依存せず、現代のサラリーマンの悲哀、高齢化社会の夫婦関係、家族の絆を巧みなユーモアと哀愁で描き出す文枝落語は、現代の観客の胸を激しく揺さぶります。80代に入った現在も新ネタの執筆や過去作の現代版ブラッシュアップに余念がなく、「高座で喋りながら倒れるなら本望」と語る鬼気迫る情熱は周囲を圧倒しています。
また、文枝一門を率いる師匠としての役割も極めて強固です。バラエティ界から落語界へ転身し見事な活躍を見せる桂三度(元・世界のナベアツ)をはじめ、筆頭弟子の桂三歩、上方落語の若手・中堅を牽引する桂三若、桂三語など、多彩な才能を擁する弟子一覧の顔ぶれは壮観です。師匠の背中を追う弟子たちへ自らの芸と美学を直接口伝する日々が、文枝にとって若さとバイタリティを保つ最良の刺激となっています。