生活者が犬ではなく猫を選ぶ理由は、情緒的な好みの問題だけではありません。日本社会が直面する少子高齢化、未婚率の上昇、そして都市部への人口集中というライフスタイルの変化が、飼育動物の選択を必然的に決定づけました。
最大の要因として挙げられるのが、「タイパ(タイムパフォーマンス)」と「住環境の制約」です。犬を飼育する場合、毎日の朝晩の散歩が欠かせず、無駄吠えへの配慮や定期的なトリミングなど、飼い主に要求される時間的・体力的拘束は小さくありません。対照的に、室内飼育が基本となる猫は散歩の必要がなく、排泄のしつけもトイレ砂を設置するだけで本能的に完了します。昼間を不在にしがちな共働き世帯や単身世帯にとって、猫は生活リズムを崩さずに共生できる最適なパートナーとなったわけです。
さらに、猫特有の「心理的距離感」も現代人のメンタリティに合致しました。自立心が強く過度な依存を求めない猫の習性は、日々人間関係のストレスに晒される都市生活者に絶妙な癒やしをもたらします。大手マーケティング調査機関の意識調査でも、「犬のように常に構う必要がなく、お互いのパーソナルスペースを保てる関係性が心地よい」という声が飼育動機の最上位に挙がっています。