スーパーの飲料売り場に並ぶペットボトル飲料や家庭用の煮出し麦茶パックの裏面を見ると、原材料名にはほぼ例外なく「六条大麦」と記載されています。一方、ビールや本格焼酎の原料欄には「二条大麦」が鎮座しています。この両者の決定的な違いは、麦の穂を上から見下ろしたときの構造にあります。
大麦の穂には1節に3つの小穂が着生しており、左右両側で計6列の粒が実るポテンシャルを持っています。この6列すべてに稔実(ねんじつ:粒が実ること)する品種が「六条大麦」です。これに対し、中央の2列のみが成熟し、両側の小穂が退化して結実しない品種を「二条大麦」と呼びます。
一粒あたりの大きさを比較すると、栄養を2列だけに集中させる二条大麦が丸々と太く大粒になるのに対し、6列すべてに粒をつける六条大麦は物理的に押し合って育つため、やや小粒で外観にばらつきが生じます。穀物問屋の担当者は「昔から二条大麦は実が均一でデンプンが豊富なため酒造用、小粒で殻皮の比率が高い六条大麦は食用や麦茶用と完全に棲み分けられてきた」と証言します。
麦茶において六条大麦が絶対的な支持を集める科学的根拠は、焙煎による化学反応にあります。六条大麦は小粒ゆえに実に対する殻皮の表面積が広く、さらにタンパク質を豊富に含みます。麦茶の製造工程で高温焙煎される際、このタンパク質(アミノ酸)と糖がアミノカルボニル反応(メイラード反応)を起こし、麦茶特有の香ばしい芳香成分であるアルキルピラジン類が大量に生成されます。二条大麦で麦茶を作ると、デンプン質の甘みは出るものの、香ばしさとパンチの効いたコクが決定的に不足してしまうのです。