食事を終えた直後、人間の体内では生命維持に向けた劇的なリソース配分が行われています。胃や小腸に送り込まれた食物を分解・吸収するため、副交感神経が優位になり、腹腔内臓器への血流が平時の約2倍から3倍にまで跳ね上がります。この消化のゴールデンタイムに激しいウエイトトレーニングを開始すると、人体は深刻な生理学的ジレンマに直面します。
筋肉を収縮させるためには大量の酸素とグルコースを運ぶ血液が必要となるため、交感神経が急激に活性化し、骨格筋へ血液が強制配分されます。その結果、消化器系への血流が突発的に遮断される「内臓虚血」が発生します。これが、多くのトレーニーを苦しめる食後筋トレ消化不良や急激な腹痛、そして胃内容物が逆流する食後筋トレ吐き気の直接的な引き金です。
さらに見逃せないのが、食後筋トレ効果半減の理由として挙げられるホルモン動態の乱れです。消化吸収を司る副交感神経と、運動パフォーマンスを高める交感神経が体内で激突すると、筋合成のスイッチであるmTOR(ラパマイシン標的タンパク質)複合体のシグナル伝達が抑制され、トレーニングによって分泌される成長ホルモンやテストステロンの応答も鈍化します。つまり、筋トレ食後すぐのセッションは、体調を崩すリスクを背負うだけでなく、費やした労力に見合う筋肥大成果を自らドブに捨てる行為に他なりません。