不動産市場において、室内の設備や利便性以外の要因で住み心地に抵抗感を抱かせる要素を「心理的瑕疵(かし)」と呼びます。自死が発生した居室は、物理的な損傷が修復されても借り手の忌避感情が強く残るため、需要と供給のバランスが完全に崩壊します。大家や管理会社は空室期間の長期化による損失を避けるため、賃料を大幅に引き下げて入居者を募らざるを得ません。
取材に応じた都内の賃貸管理会社幹部は、「自死の発生直後は、通常の募集条件ではまず問い合わせすら入らない。リフォーム費用を投じた上で、最初の入居者に対しては家賃を半額程度に設定し、共益費や敷金・礼金をゼロにするのが業界の暗黙の初動対応だ」と明かします。
一般的に、自殺物件における賃料の下落率は、事案の凄惨さや経過年数によって段階的に推移します。以下は、事由別の告知義務期間および市場価格への影響度をまとめた客観データです。
初期の入居者を確保できた場合でも、次の更新時や2人目の入居者募集時には賃料を少しずつ正常価格へと戻していく運用が一般的です。初期の「超格安家賃」は、貸主が被った損失を埋めるための時限的ディスカウントという側面を持っています。