仲野太賀さんが芸能界入りを果たしたのは2006年(当時13歳)、フジテレビのドラマ『新宿の母物語』でした。名優の息子でありながら、デビュー時に彼が選んだ芸名は苗字を排した「太賀」。ここには、「父親の名前を借りて下駄を履かせてもらうことだけは絶対にしない」という強固な自立心が宿っていました。
所属事務所も父親と同じ事務所ではなく、大手芸能事務所「スターダストプロモーション」の門を自らの意志で叩き、一般の応募者と全く同じオーディションを勝ち抜いて所属を勝ち取っています。現場の制作陣やプロデューサーに対しても、中野英雄の息子であることはあえて明かさず、数百回に及ぶ厳しいオーディションに落ち続けては這い上がるという、二世の特権とは真逆の泥臭い下積み生活を10代から20代前半にかけて経験しました。
転機となったのは、デビュー13年目を迎えた2019年6月です。本名の「中野」ではなく、人との縁やつながりを意味する「仲」の字を当てた「仲野太賀」へと電撃改名。当時の公式インタビューで本人は、以下のような趣旨の決意を明かしています。
「俳優として10年以上活動を続け、ようやく胸を張って家族の名を背負い、仲間とともに歩んでいく覚悟が定まった」
親の威光を避けて一人立ちを証明したからこそ、再び家族や仲間への感謝を名前に宿すことができた――この筋の通った改名ドラマこそ、映画ファンや演劇関係者から絶大な信頼を集める理由となっています。